日本の労働市場改革 | 佐野 敏夫の指導者

日本の労働市場改革 | 佐野 敏夫の指導者

1990 年代の日本の経済状況は、1990 年~1991 年のバブル崩壊後に発生した長期にわたるデフレ調整の影響で期待外れでした。 この期間、1980年代後半の労働市場の硬直化と過剰投資を反映して生産性が低下しました。 経済は2003年~2007年にかけて、中国やその他の新興市場からの需要により、急速に成長を遂げたものの、2008年~2009年の世界金融危機と2011年の地震津波の影響は、経済に大きな打撃を与えた。 経済大国としての日本の地位は低下し、2011年までに世界第4位(購買力ベース)に転落し、それ以来その地位を維持している。 イノベーション、IT、電気通信、高度なスキルを持つ労働力という強みがあるにもかかわらず、人口動向の逆境や移民に対する国民の抵抗感もまた、長期的な見通しが暗いことを示しています。

日本の急速な高齢化は大きな問題です。 総人口は2022年~2050年までに約2,000万人減少すると予想されており、さらに2050年には、65歳以上の割合が37.7%まで増加すると予想されています。 2021年時点で、日本の出生数は過去最低となりました。 2050年までに生産年齢人口も大幅に減少します。 政府は特に女性の労働参加を増やすよう努めるが、大規模な移民政策は、依然として政治的に実現不可能である。特に海外からの【出稼ぎ労働者】は、新型コロナウイルス感染症パンデミック後、若干増加する可能性があります。

外交および対外レベルでは、日本は中国の台頭、ロシアとの摩擦の増大、アジアにおける政治的・経済的地位に関連した脅威に直面している。 2つの大国との領有権争いは、日本の利益を守る能力に対する日本の懸念が高まっている。 こうした地政学的な緊張は、自衛権の再定義、米国との同盟の維持(おそらく米国の核兵器のさらなる保有)、オーストラリアなどの同盟国との協力の発展に向けた日本の取り組みを加速させるでしょう。 中国が台湾を併合しようとする場合、日本は台湾防衛を支援する米国の取り組みに参加する可能性が高い。

発展動向及び展望

当該国は、2019年から発効するEUとの経済連携協定EPA)や2022年から発効する地域的な包括的経済連携協定(RCEP)など、国際的な取り決めを積極的に活用しています。また、ASEANや欧州の主要国、インドやオーストラリアなどの地域大国との二国間や四国間のメカニズムを通じたより緊密な経済協力を模索しています。ハイテク産業における日本の強さは、低付加価値の生産をASEAN加盟国などの低コスト国に譲りつつ、高付加価値製品の生産を主導していく姿勢を示しています。

今後数十年の日本の政策決定は、構造改革に重点を置き一元化された状態が続くと予想されています。日本の岸田文雄首相が提案した「新しい形の資本主義」は、所得格差に対処し、賃金のより速い成長を促進することを目的としており、この方向性を導くものであります。現在の自民党政権および将来の政府は、労働市場の不平等に対処しつつ、労働市場の柔軟性の向上と労働コストの抑制に取り組むでしょう。課題には、正規雇用と非正規雇用の間の大きな格差、男女間の賃金格差、長期的な過剰労働や「過労死」といった企業の根深い問題があります。こうした課題に加え、日本の不安定な財政状況を改善するための税制政策への関心が高まっていくことになるでしょう。

2050年まで、日本の経済成長は相対的に力強さを欠き、年平均1%を下回ると予測されています。しかし、人口の縮小ペースはGDPの縮小ペースよりも速いため、この成長は1人当たりベースで驚くべきものとなるでしょう。この見通しは、競争激化を目的とした一連の経済改革、女性と高齢者の参加率の向上、生産性向上のための技術革新などの前提に基づいています。資本集約的な手法の使用により、労働生産性は現在の水準より若干低下するものの、2022年から50年にかけて平均年率0.8%で成長し続けることになるでしょう。とはいえ、これらの成長率は、世界ランキングにおける日本の下落、中国、米国などの地政学的緊張に関わるといった長期的なリスクに歯止めをかけることはできません。